TCH是正咬合療法

TCH是正咬合療法とは

TCHとは、1日(24時間)から上下の歯がついていない時間と食事・嚥下・会話で上下の歯をつける時間(20分以内)引いた残りの時間が該当します。このTCHを限りなくゼロに近づけることがTCHの是正の目標ですが、たとえゼロにならなくても、減るだけでも効果は表れます。TCH是正は噛まないということではありません。したがって、食事のときにはシッカリ噛んでください。

*木野孔司元東京医科歯科大学准教授グループがらがTCHを減らすことで顎関節症を改善できることを発見。

*TCH(Tooth Contacting Habit)とは、無意識のうちに上下に歯をつける癖で、専門的には上下歯列接触癖と呼ばれます。

TCHリスク分類

TCHリスク1TCHのほとんどない人です。TCHコントロールを受けてはいけません。TCHを意識させると、逆にTCHが現れてしまう可能性があります。
TCHリスク2多くの人が、この分類に入ります。普段はTCHがそれほどないのですが、TCHが増えるような環境や状況に置かれるとTCHが増えてしまうパターンです。本人はTCHの存在を自覚できていませんが、TCHの存在を認識して、TCHを是正できるようになると、将来的に口腔内のトラブルで悩むことのない人生を描ける可能性が非常に高まります。
TCHリスク3無意識ですが、日常的にTCHを行っており、口腔内にTCHによるトラブル症状が現れている人です。歯のトラブルも頻発し、歯科治療を契機に咬合違和感を起こしやすい状況にあります。また、顎関節症や隠れ顎関節症になる可能性が非常に高まっています。TCH是正は必須です。
TCHリスク4この段階でも、本人は自覚していない可能性が高いのですが、強度のTCHがあり、咬合違和感、隠れ顎関節症、顎関節症というような病的な症状が現れている状態です。放置できない状態です。

TCHリスクが高くなると

ポトポトと落ちる水滴で硬い石が凹む雨だれの石を想像してください。これと同じように、弱い力で上下の歯を当てている癖でさえも、長い年月続けば様々なトラブルが起こります。強くかみしめる癖や夜間の歯ぎしりが激しかったりすればなおさらです。TCHは誰にでもある癖で、多くの人がTCHリスク2に該当します。こうした人々も、過剰なストレスの加わる状況になると、TCHリスクは一気に高まり、今までよりも口がスムーズに開かなくなる・口を開け続けられない・口を大きく開けられなくなる・咬む位置が定まらないようになるといった顎関節のトラブルや歯の破折・歯周病の急激な進行などが現れます。

咬合違和感という怖い病気

TCHリスクの高い患者さんが、奥歯に詰め物をされた時に「少し高い」と感じただけで、頻繁に対合歯と当ててしまいます。詰め物をされた歯が浮き上がりより高くなったところで、さらに当てることを繰り返すと、左右の咬む筋肉のバランスが狂い、ずれて咬み合わせるようになります。かみ合わせ位置が変われば、当たる個所も変わり、咬合違和感が出てきます。咬合違和感が重症化すると、精神状態が不安定となり、仕事が手に付かない、場合によっては寝たきりとなります。咬合違和感を発症させてしまうと、容易に治癒させることはできません。したがって、TCHリスク3bは当然ですが、TCHリスク3aの患者さんでもTCH是正が出来てから咬み合わせに関係する歯科治療を受けるべきです

TCH是正咬合療法の効用

事前に、顎運動・TCHの検査をして、必要な場合にはTCH是正を行います。TCH是正が出来ると、その後の治療がとてもスムーズに行え、治療期間も短縮できます。例えば、入れ歯を長時間装着可能になる、矯正移動がし易くなる、歯周病の進行速度が改善されるなど、そして何よりも咬合違和感発症の可能性を低く抑えることが出来ます。

TCH是正咬合療法を活かすために

TCH是正を行ったことで、かみ合わせ位置が決まります。髪の毛1本でも認識できる繊細な口腔内で、かみ合わせ位置を変化させないように歯科治療します。そのためには、今まであった歯をコピーした仮歯や被せ物を作ります。こうした繊細な作業を成功させるために、歯科治療の治療計画から歯科技工までを一貫して歯科医が行います。ハンドメイドの利点を最大限に活かして、歯科治療によって引き起こす可能性のある咬合違和感発症を最少化します。

TCHを減らす方法

TCHリスク分類で、TCHリスク3a,TCHリスク3bに該当する患者さんは、必ず是正指導を受けていただきます。是正指導として、木野孔司元東京医科歯科大学準教授が開発された「貼り紙をみたら、脱力する」という方法を導入しています。

1. 「はなす」と書いた張り紙を5分以上目に留まる場所、例えばキッチン、デスク周り、スイッチ時計などのそばに15カ所以上貼ってください。

2. 張り紙が目に入った時、または「あっ!歯を当てている」と気付いた時だけ次に説明する方法を行ってください。「絶えず歯を離しておこう」と意識しないでください。

TCH是正咬合療法についての雑誌へ論文

「歯界展望」(医歯薬出版)
2015年9月号