ペリオクリーニング

「ペリオクリーニング」誕生秘話

「生涯自分の歯を残す」ことを目標として1977年に開業しました。目標を現実にするには、歯を失わなければよいのです。グラフから、歯を失う主な原因は虫歯・歯周病・破折です。虫歯・破折に関しては、予防に努め、予防できなかった歯については高精度なロングライフを目的とした虫歯治療を受けることです。したがって、目標を現実にする大問題は歯周病の攻略です。歯周病とは歯周ポケットが深くなることで歯を支えている歯槽骨が減り、やがて歯が抜け落ちる病気です。
開業当時、歯周病は治らない病気と考えられ、歯肉が腫れ歯がグラつくと抜歯されました。歯周病治療を得意とする歯科医院では進行した歯周病に外科処置を行っていましたが、その後の口腔ケアが上手く出来ていないと再発が当たり前でした。
私たちは、外科処置をせずに歯の寿命を延ばす歯周病管理法を模索していた時に、定期的に歯周ポケットの管理をして歯の寿命を延ばすという外国の文献に出会いました。このアイデアをもとに試行錯誤した結果、3か月ごとに来院してもらい、歯ブラシ指導をしながら歯周ポケット内を消毒することで、歯周ポケットが浅くなり歯周病管理に繋がることが解りました。そこで、「ペリオクリーニング」と名付けて当院独自の歯周病管理法として本格的に開始しました。予想以上の効果が望めたため、38年後の現在も継続しています。

1. 進行した歯周病の歯を残す

ペリオクリーニングを実験的に開始した当初は、どんなに重症な歯周病の歯であっても残す試みや来院頻度を変えることによる効果の違いを調べることなどを行いました。ペリオクリーニング38年の経験から、TCHリスクが高くなければ、3か月ごとの来院で、通常歯周ポケット6mm以上は抜歯と考えられていますが、9mmぐらいまで管理可能と判断しています。TCHリスクが高いと歯周病を進行させ歯の喪失に繋がります。したがって、TCH是正は絶対条件です。付け加えておきたいことですが、歯周病の歯を残すことで心臓病などの全身疾患に繋がると言われ、歯周ポケットの深い歯の早期抜歯を推奨するようですが、こと会員に限ってですが、深い歯周ポケットを残しても、今までのところ該当する患者さんは現れていません。

2. 必ず、3か月毎に歯科医が診察

ペリオクリーニング発案に関与した渡邉晴美歯科衛生士が38年に亘り担当してきました。渡邉は、自分のアイデアが現実となったペリオクリーニングを自分のライフワークと考えて仕事に打ち込んでいます。一方、院長の私は、自分の仕事の合間に、会員の口腔内を3か月毎に診察し続けてきました。3か月という短い期間ですから、前回の診察結果と大きな変化がないはずすが、それが30年以上にもなると大きな違いになります。例えば、50歳からペリオクリーニングを開始して大きな変化を感じられなくても、80歳になったとき、ペリオクリーニングを受けてない同世代の方と比べた時大きな差がついてます。何もしていなかった同世代の人は多くの歯を失い、歯を失うことで顔の形まで変わってしまっているのです。3か月毎の診察で、奥歯が揺れるため、「最近TCHが増えています」と言ってあげるだけで、3ヶ月後には揺れなくなっている事はよくあることです。また、小さな虫歯があっても進行しないことも多いので、しばらく様子をみます。それは、歯を削ることが、結局は歯の寿命を短くするという結果をえているからに他なりません。

3. 「ペリオクリーニング」38年の実績

38年が経過し、もうペリオクリーニングの効果を評価してよい時期と考えています。それは、「100歳まで自分の歯を本当に残せる可能性があるのか」という評価です。大袈裟ですが、これは人類にとって未知の分野といっても過言ではないはずです。それだけに、10年位の経年変化で語ってはいけないと考えていました。現在、ようやく90歳位まで残せたという症例をえられるようになりました。しかも、90歳でも歯を支える歯槽骨が十分に残っていることが判明したため、100歳まで今までどおりの口腔内ケアを継続出来れば100歳まで自分の歯を残せます。 ちなみに、今現在の会員123人中94人が会員期間中に1本も抜いていません(76.4%)。会員の継続年数は2年以上から37年までさまざまで、平均継続年数は12,6年です。

上記のグラフは、サイトウ歯科の2020年現在のペリオクリーニングの会員データを元に5歳ごとに区切ったグループの平均残存指数です。親知らずを含めた32本中、85歳以上の方で23.5本残っています。厚生労働省のデータによると10.7本と比べるとはっきりとした差が見られます。これは会員の歯を抜く必要がないため、会員の残存歯数は減らない状態を維持していくためです。

歯科医学誌「デンタルハイジーン」1985年4月号に
ペリオクリーニングが紹介されました。